バスに出会う確率を上げる7つのルール
Rule 1 周囲を描く
バスに限らず、生物の多くは周囲の環境や状況に、反応するかのように行動している。バスの本能的な意思は、その行動規範としてあるものの、その環境によって影響を受ける。つまり、バスの動きを探るには、周囲の状況の観察が重要だ。
ある画家は、こういった。「親指を描くならば、その周囲を描かなければならない」。親指という存在を描くには、親指を正確に描くことだけでは表現できない。その周囲を描いてこそ、親指の本質が浮き出される。
これは、バス釣りにも共通するところがあって、バスばかりに焦点を当てていてもバスは見えない。むしろ、水質や流れ、ベイトフィッシュの動きを、どれだけ関連性を持ってイメージできるか。周囲の状況を、どれだけ描き切れるかが、バスの居場所や状況のイメージのリアルさに繋がる。
その背景には、もちろんセオリーがある。しかし、セオリーは方向性を示すに過ぎない。その大半は、自身で感じ取った、その場その場の感覚が、重要になってくる。「バスは、どこにいるか」という視点だけでは、リアルにバスの状況は見えてこない。
その周囲の状況を、どう捉えどう描くか。良さ気にみえるスポットやありがちな場所。魅力的にみえる状況はいくつもある。しかし、それだけでは運任せに過ぎない。こんな感じという雰囲気に流されず、しっかりと状況を見極めていく。
そのスタンスが、イメージをよりリアルにし、高い集中力の維持にもつながっていく。「バスを釣りたければ、周囲を描け」。これは重要なスタンスのひとつだといえる。
Rule 2 天秤の法則を使う
捕食を主体とする生き物に共通する見方としては、「狩りの効率性」がある。生き物というのは、基本的に打算的だ。獲物を狩る時には、その損得感情を一瞬にして行う。もし、その獲物とリスクや損失を天秤に掛けて、リスクや損失の方が上回るようならば、行動しない。逆に、リスクを多少侵したとしても、それ以上の見返りがあれば、行動に出る。こうした行動規範は、バスも同じだ。
そして、大きく成長したバスほど、その判断の精度は高くなる。だからこそ、大きく成長することが出来たのだ。つまり、捕食することで得られるカロリーと、そのために消費するカロリーと危険性。それらを常に天秤にかけて判断しているといえる。
では、バスにとって優位に捕食するにはどうすればいいのか。まず、日中帯の捕食にはリスクが伴う。特に、ピーカンでべた凪ならば、水中の自分の姿が、天敵である鳥や動物に丸見えだ。だから、風が吹いたり雨が降れば、捕食はしやすくなる。
こうしたことを考えれば、捕食するには、薄明かりのある明方や夕方がいい。いわゆるマズメ時ということになる。この点を踏まえて考えると、その日のバスの空腹状況を推し量ることができ、活性の状況の判断材料にすることができる。
特にスポーニングを控えた時期においては、越冬で失った体力の回復に加え、産卵に向けた栄養補給の必要性から、より効率性を求めた捕食活動になっていくと想定される。これは、つまり簡単にいうならば、「ルアーを大きくするとよい」ということである。
たとえタフだと感じる状況においても、カバーに付くなどした安全な状態であれば、「追いきれない状況ではない、捕食できる確率が高い、得られるカロリーも期待できる」とバスに思わせることで天秤をバイトする方向に倒すことができる。
食う価値があると思わせ、捕食行動にスイッチを入れること。本能の天秤を思い描いて、何が優先されているのかを考える。それは、”バスに勝算を与える”ことだ。
Rule 3 変化の読む
バスは、変化を好む性質がある。このことは、アングラーは承知していること。しかし、変化と一言でいっても様々だ。その変化の見方ひとつで、”変化”も変わる。変化を定義するとしたら、どう定義できるか。それは、「継続性が途切れること」と定義できる。
継続性を途切れさせる要素の大小は関係ない。冠水した植物が続くショアラインでは、倒木は、変化ということができるだろう。護岸されたショアラインならば、数本の冠水植物が変化であるということができる。杭が立ち並ぶような状況ならば、斜めになった一本の杭は変化だといえる。流れがヨレる場所や流れ込みも変化。岩盤にある30cm四方のフラットも変化。
また、水生植物の変化から、底質の変化を読み取ることができる。岩盤のエグレは、その下に崩れた岩盤があることを物語っている。カワウの存在は、そこにベイトフィッシュがいることを示しているといえる。自然河川は蛇行するという原則に立てば、岬から川筋を読み取ることができる。
その視点は、物理的な大小に起因するものではない。変化を「継続性を途切れさせるもの」という見方をしたとき、これまで見えてこなかったどんな変化が見えるだろう。バスを探すということは、こうした変化を探すということだともいえる。点ではなく線で変化を読む。この見方がバスとの距離を縮めてくれる。
Rule 4 スキャターポイントを攻略する
深場やサンクチュアリーにいるバスは、基本的には、スクールしていることが多い。スクールとは、群れ。個体ではなく、ある程度の数で群れる。それは、そもそも深場などでは、条件のよい場所が限られることにも要因があるだろう。
スクールのバスが、シャローに向かうとき、マイグレーションルート、つまり沿線を行く移動ルート。カケアガリやドロップオフにある障害物など、コンタクトポイントを経由してシャローに向かう。そして、カケアガリを上りきったところに、スキャターポイントがある。スキャターポイントとは、群れが解散する場所と捉えればいい。
そのポイントを過ぎれば、バスは単独行動を始める。ただし、それも障害物が基本。このシャローの絶好の餌場となる障害物とルートであるカケアガリやドロップオフはセット。切り離して考えることは出来ない。そのセットで考える際の繋ぐポイントが、スキャターポイントであるといえる。
シャローを見切るには、それに関連するブレイク。ブレイクを見切るには、それに関連するシャローの障害物。スキャターポイントを軸に、関連性を見ていけば、その優先順位やアプローチの順番も見えてくる。
シャローにバスがいることが判れば、それに関連している障害物のタイプを見極める。そこには、「傾向」が必ずあるからだ。バス釣りは、体力や運勝負のゲームではない。戦略を基本とする確率のゲームであることを忘れてはいけない。
デパートの売り場にエスカレータを降りたとき、わくわくする気持ちを感じることがあるだろう。バスは、シャローへの移動には、それ以上の思い入れを持って上がってくる。リスクを天秤に掛け、満を持してやってくるのだ。
スキャターポイントで、解散する状況を想像したとき、それが、いかにプライムタイムかが想像できる。それを具体的にイメージできたとき、現実にスキャターポイントに出会えるだろう。
Rule 5 タフとは何かを知る
減水すると、岸際のカバーがなくなる。そして、何よりも、水が悪くなってしまう。考えられるアプローチを試してみても反応がない。何をやっても反応がない。いわゆる、タフという状態になってしまう。
タフったときの対策としては、やはりスローに攻めることが頭に浮かぶ。しかし、その選択が、ベストであるとは限らない。タフという状況を俯瞰してみたときわかることは、ふたつ。
ひとつは、相対的に、バスの活性が下がってしまうこと。そして、もうひとつは、バスの状態はひとつではないということ。つまり、中にはタイミングによって食い気が立つ奴もいる。しかし、それが全体からみれば圧倒的に少ない状態だ。
食い気のないバスをスローに何とか食わせるのか。数は少ないが、やる気のあるバスを手返し良く探すのか。確率的な話になれば、どちらに分があるかは、その状況によって、はっきりと断言することはできない。しかし、キャスト数はそのまま確率に反映される。
またタフという状況は、バスの行動範囲が狭くなるという見方ができる。つまり活性が高ければ追っていける距離を追わない。こうした状況を想定すれば、あの辺、この辺ではなく、バスの半径30cm以内にルアーを通していくような感覚が重要となる。
この事実を、どこまで自分の中で納得して取り込めるか。タフな状況というのは、ある意味でアングラー自身が創り出しているものだといえる。ルアーやリグが多種多様にあるのは、バスの好みに合わせてあるのではない。それは、あらゆる状況に合わせて効率よく釣るためにある。
それは、そのときにアングラーが、何が最も効率的であるかの判断次第であるということだ。タフな状況における確率の問題。ルアーによって釣れる釣れないが語られがちな中で、それ以前にあることを、しっかりと押さえておきたい。
Rule 6 リアリティを演出する
クランクベイトで流しているときに、見えバスがいると、そのままクランクベイトで釣りたくなる。しかし、クランクベイトというのは、そもそもカバーベイト。つまり、カバーに隠れているバスを釣るもの。バスにぶつける様に使うイメージだ。
だから、見えバスにアプローチする際にクランクベイトを通しても、バスは、逃げてしまうことの方が多い。見えバスを釣るならば、ライトリグを使うのが堅く、それも、際に落とすのではなく、バスからは見えない位置に落とすべきだ。
釣るのに、なぜ見えない位置に落とすのかといえば、バスに”気付かせる”ことが重要だからだ。シャローにいる見えバスは、カバーに隠れたバスよりも、基本的には、警戒心が強いと見たほうがいい。だから、バスの鼻先に落としにいくのではなく、視界にギリギリ入る辺りに入れて気付かせる。
ルアーを演出する立場からすれば、「見つかりませんように・・」というメンタリティだ。バスに気付かせたいけど、気付かれないようにアクションさせる。どうにかバスから逃げ切りたいという思いでルアーを動かす。そのリアリティが、シメシメと感じたバスにスイッチを入れる。
Rule 7 アジャストする ~プロの視点
「どんなに優れたプロゴルファーであっても、完璧なゴルフをすることはできない」。ゴルフは完璧さを求めることよりも、如何に調整(アジャスト)していけるか、を追求することが求められるスポーツであるという。
ゴルフは、自分自身の身体の動きとボールの状況を基軸として、アジャストするための戦略や戦術を組み立てていくことになる。一方、自然を相手にする釣りにおいては、その状況を正確に推し量ることはできない。
いくら季節や水温が同じでも、過去に全く同じ状況は存在しない。一方で、どんな状況でも高確率でクオリティフィッシュを手にすることできるアングラーがいる。彼らは、セオリーやシーズナルパターンの知識や経験が豊富であるだけではなく、間違いなく、このアジャストする能力に長けているといえる。
数々の自然条件の中で、アジャストしていくためには、フィールドからのフィードバックを得ること、そしてそのフィードバックから状況を紐解いていく必要がある。有効なアジャストを行うには、まずフィードバックを感じ取る感性が必要だ。そして、その感じ取ったものを次の戦術に活かしていく発想力が求められる。
そこには、知識やノウハウだけではなく、経験により導き出される”直感”がカギとなる。直観力を鍛えるためには、何か違和感を感じたり、ふと思いついたことを、まずは行動に移してみることだ。無意識に捨ててしまっている感覚に自らスポットライトを当て、行動することにより、リアルな体験に変えていく。
また、プロと呼ばれる人たちがプロである所以。それは、「プロは、より細かい区別が出来る」ということだ。この「区別できる細かさ」が、レベルの差を作り出す。「区別」は、「判断」に繋がる。「判断」は、「結果」に繋がる。
たとえば、プロの陶芸家は、土の種類を何十種類も区別できる。素人には、同じに見える土を細かく区別して使い分けることによって、プロとしての「結果」を導き出している。プロスキーヤーは、雪質を細かく区別して、その滑り方や力の入れ具合を変えて、結果の違いを出す。
釣りでいえば、どうだろうか。水質、風、流れ、ルアー、ロッド、リール、ベイト、水温、季節・・・。様々な「細かい区別」を行う局面がある。このひとつひとつに区別を見出して使い分ける。釣りに限らずトッププロと称される人にとっては、道具に求める「細かさ」が重要になってくる所以だといえる。
素人には区別することができない領域で違いを感じ取り、その違いを成果の違いに繋げる。ここにアジャストのカギがある。そして、アジャストの先にあるクオリティフィッシュとの出会いが、さらなる直感力と新たな「区別」を生み出してくれる。自分の持つ「区別」は何か。今一度、問い質してみたい。