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トーナメントDAY3

10月7日

マークは、スキーターチームであるため、桐山プロとも仲がよく、フライトのとき、桐山プロが「TOSHI!マークはいい奴だから、よろしく!」といっていた。マークが「なんて言ったんだ」と訊くので、それを英語で話すと、謙遜していた。とてもナイスガイだ。マークの2日目のパートナーは、僕の初日のパートナーであったマーク・ルセインで、「彼は、非常によいエリアを持っていた」と話していた。やはり、マーク・ルセインの持っていた、あのブレイクに絡むウィードの柱は、非常によかったのだろう。初日の釣りが悔やまれる。

マーク・カイルは、「非常にタフで、困難な釣りになる」と話していたので、タフか、非常にタフか、むちゃくちゃタフかを問うと、むちゃくちゃタフだと応えた。僕が釣れていないことを話すと、がんばって1本取ろうと元気つけてくれた。帰着の時間は、16:10。マークは、食い始めるのは午後からだから、GOODだ、と話していた。

マークの釣りは、どちらと言えば僕の好きなタイプ。どんどんエリアを移動してタイミングを合わせていく。マーク・ルセインのように魚が回って来るエリアで待つことも有効だろうが、僕は魚の回ってくる時間を見据えて効率よく回るほうがよいと思っていた。僕がプラクティスを行っていたら、その時間をチェックすることに力を注いだだろう。この広大なフィールドでは、琵琶湖のようにエリアを休ませていて、次に入れないということは、まずない。

マーク・カイルが、確実に魚が回ってくる場所に自信がなかったのか、判った上で効率よく回るべく移動を繰り返したのか、真意は判らないが、プラクティスを行っていない僕が、一つの場所にコンフィデンスを持つことは困難であるため、マーク・カイルの移動を繰り返す釣り方は、精神衛生上に楽だった。しかしそれにしても、マークのボートは速い。メーターでは80マイルを指していた。シングルコンソールで、もろに風を受けるため体が硬直してしまう。気を緩めるととんでもないことになりそうなくらいだった。ゴーグルは必須だし、寒いと目出し帽は必要だと思った。

まわったエリアは、様々だ。ただマークは、岬やホールなどのスポットを釣っていった。それに、ボートポジションを常にフェアに取ってくれて、エリア毎にどういったエリアで、どちらにキャストしろと教えてくれた。そして、僕の2日目のパートナーのカークがキャッチした同じエリアにも入った。そこで、マークはグッドフィッシュをキャッチしたらしい。ただ、カークが取ったのは、朝の早い時間だ。マークは、「魚はたくさんいるが、バイトしてこない」と話していた。

マークは、「リラックスしてやろう」といって、飛び立つカモに対して、ロッドをライフルに見立て、撃ち落とすしぐさをした。「ハンティングだ。バス釣りもハンティングで、ライフルで狙い撃つように釣るんだ」と水面にライフルに見立てたロッドで打つ真似をした。硬直する時間が過ぎていったが、グースの泣きまねをしたり、緊張をほぐすように心がけてくれた。

午後になっても、ライブウェルには、魚がなかった。マークの表情が、徐々に真剣になっていくのを感じた。小さなインターセクションのゴロタの岬エリアに入る。底が見えるほどクリアだ。底が見えてしまうと釣れる気がしないのが、琵琶湖アングラーだ(?)。しかし、マークはそこでキーパーサイズをキャッチする。マークの執着心には、脱帽する。僕は、半分諦めかけていた。その部分が、勝敗を分けることを痛切に感じさせられた。

釣れたから粘ると思っていたが、すぐに移動する。朝に入った長いホールだ。「調度、今時分に釣れた」とマークは話していた。マークは、キーパーが取れたことで、精神的に楽になったのか、色々なことを教えてくれ、「ビックフィッシュを取ろうぜ!」と元気づけてくれた。マークは、ラインの出し方が少なすぎるといい、「スモールはスプーキーだから、ボートの影で逃げてしまう。ドラッキングも、どんどんラインを送り出して、時間を置いてやる必要がある」と教えてくれた。マークもスピニングでキャロをしていた。ラインをフリーに出せるスピニングのキャロは、非常に理にかなっていた。

そこで、集中力を高めた僕は、小さなバイトをフッキングに持ち込めた。ラージとは違う強い引きで、これがスモールか?とも思ったが、僕は「頼む、バスであってくれ」と呟きながら巻き取っていった。魚体が見え、マークが「10lbフィッシュだ」という。僕は興奮したが、次のヒラを打った瞬間、「カープ(鯉)だ」と呟いた。メートル級の鯉だ。僕は、落胆した。これ以上ないくらいに落胆した。無事ネットに収め(?)リリースしようとしたとき、マークが、「それをウェインしろ」という。「フィッシュ(フィッシュバーンのこと。ウェイインの司会者)は、そういうジョークは大好きだし、スタッフも喜ぶ」という。

僕もそういうジョークは好きだし、やってもいいと思ったが、始めての参戦でどうだろうかと考えた。バスが釣れたらリリースしようということでライブウェルに収めた。「これで、おまえも全米のテレビに映るぞ」とマークはいうが、僕は迷っていた。バスを釣るためにきて、鯉をウェインして帰るのか?もう、何戦もしてきて、成績を残した上でのジョークならまだしも、これでは情けないだけじゃないか?

次のスポットに移動した時、「マーク、ごめん。僕は、日本からバスを釣るために来たのだし、このトーナメントは夢だった。これからもチャレンジして行きたいと思っているし、今の僕にはジョークをするほど余裕がないんだ。本当に申し訳ないけど、鯉をウェインすることは出来ない」と説明した。マークは、「That’s OK」といって鯉をリリースした。僕は、「そういうジョークは大好きだけど、今は出来ない。本当に申し訳ない」というと、マークは、「よし、それじゃぁ、バスを釣ろうぜ!」といって、僕の肩をたたいて笑った。今、思えばコイでも、ウェイインしてテレビに映ればよかったと少々後悔している。

そのエリアでは、マークは、カレント(流れ)がないといってすぐに移動した。「どのエリアもカレントがない。タフだ」と何度もいっていた。上流部のエリアでは、釣り方について色々教えてくれた。「初日のマーク・ルセインとの釣りの時、釣れなかったのか?」と訊かれたので、「リザードを持っていなかったので、初日の夜に買った」と応えると、「マークは、くれなかったのか?」という。「くれなかった」と応えると、「本当にくれなかったのか?」と何度もいった。

ラインの太さや、シンカーなど色々教えてくれた。本当に勉強になった。マークに僕がアメリカでバス釣りがしたいと話したとき、スポンサーはあるか?と訊かれた。僕は、「MY WIFE」と応えた。「Wifeは、働いているのか?」と訊かれ、「NO」と応えたが、お金を出してくれるだけがスポンサーではないと僕は思っているといった。マークは、「僕のWifeは、僕をスポンサードしてくれないけど」と言って笑った。

ウェイイン会場では、マークがフィッシュバーンのインタビューに応えていた。マークが、日本から(わざわざ)来た僕のことを話していた。鯉を釣って、ウェインしろといったが、云々と話してくれていた。やはり、ウェイインしとくべきだったかな、と少し後悔した。ウェイインを終え、ボートを上げるとき、僕は「今回の結果をどう受け取るべきかな?」とマークに訊いてみた。マークはこう話した。「2年前、僕はパウエルで優勝した。しかし、その翌年パウエルでは、1匹もウェイイン出来なかった。そんなこともあるんだ」。それは、マークが僕に「釣りなんて、そんなに簡単なものじゃないし、そんなことを気にしていては、ダメだぞ」と教えてくれているような気がした。そして、僕の肩を2度叩いて笑った。サングラスの奥の僕の目には、感謝と感動の涙で一杯だったことを、マークは知らないだろう。

最終日の夜、ステーキハウスで桐山プロ、宮崎プロと奥さん、B誌のS氏とディナーを食べた。桐山プロの戦略は、見事だった。キャロのドラッキングという釣りは、自分にはできないと本戦前から言っていた。しかし、2日間リミットメイクしてくるという偉業はどうやって成し得たのか?その戦略とは、トーナメント全週に行われたトーナメントでリリースされた魚は、ヤキマリバーに向かい、その途中の橋桁に止まる。との読みだった。

3日間、時間を空けては数箇所の橋桁をまわるという釣りを行っていたのだ。見事としか言いようがない。宮崎プロも、「強い選手というのは、釣れなくても必ず試合中であれ、アジャスト(調節)してくる」と言っていた。当の宮崎プロも、最終日ダム超えし、風が吹くのを待ってぎりぎりに帰着するという勝負に出た。他の選手が14:00のダムの開く時間に戻っていったにも関わらず、宮崎プロは、15:00まで止まり、ナイスキーパーでリミットを揃えた。

入賞こそは出来なかったが、その勝負の結果、順位を大きく伸ばしていた。どちらも見事だった。その戦略の立て方と勝負との駆け引き。日本のトーナメントでは味わえないものだと感じた。それから、桐山プロのTOP150参戦話を聞き、メディアで見るほど花々しい場面だけはないことを知った。十数時間トレイルするのは当たり前、トラックで寝たり、スーパーで歯を磨いたりと、とてもカッコいいものではないと話していた。

S氏には、そういった実状を伝えなければ、安易な考えでアメリカに来るものが後を絶たないと言っていた。少し耳が痛かった。しかし、そういった凄まじい実状を知っても尚、僕はアメリカにチャレンジしたいと思っていた。桐山プロの連絡先や宮崎プロの連絡先も伺い、今度来る時は事前に連絡すれば色々と教えてくれるという。大変有り難い。今回のように、防寒着がないとか、キャロの道具がないとか、そういう大ハズレをしないようにしたい。

宮崎プロが、今から一緒にシアトルに戻って、明日の飛行機までレイク・ワシントンで釣りをしようかと誘ってくれた。しかし、まだ荷造りもしていなかったし、レンタカーを返して云々の時間を待ってもらって、4時間かけて戻った上、明日の朝の釣りは申し訳ないと思い断ったが非常に嬉しかった。機会があれば、ぜひプライベートでレイク・ワシントンにおじゃましたいと思っている。

こうして、僕のB.A.S.S.初参戦は幕を閉じた。

ナイスガイ、かつジェントルマンのマーク・カイル。彼は、今回のパートナーの中で一番のトップクラスだ。そんな彼でも、今回はかなり苦戦していた。結果としては、入賞圏外であったが、自分のスタイルを突き通す姿勢は見事だった