トーナメントDAY2

10月6日

4時前に起床。5時半にモーテルを出る。コロンビアパークの駐車場で、パートナーのカークに会う。初対面だ。ボートは、バスキャットでエレキが自動マウントされるようにチューニングされていた。かなり高額だったらしい。「釣ったか?」と訊くと、「12本とった」と応えた。かなりいい感じだ。全面的にお任せで行こうと思う。第2フライトで開始。まずは、支流のインターセクションに入る。他に3艇ほどボートがいる。カレントが結構あって、流れにバウを向けてキャストし、ほっとけ、である。

やはり、リザードのキャロだ。それもパンプキン。エディーは、内緒だといっていたが、みんな使っている。ここでは、常套なのだろう。1時間ほどで、カークが3lbフィッシュをキャッチ。なんだか、ラッキーっぽい釣れ方だった。徐々にボートが移動していき、結局僕たちだけになった。しばらく粘っていたが、ロックエリアに行くと言って下流に向け大きく移動した。

ロック護岸のエリアで、水深は6mほど。風が強く、釣りにくい。長い護岸のそこをどうして選んだのか判らないが、あんまり釣れる気がしない。それも同じ場所で粘っている。護岸沿いに流しながら行くのかと思っていたが、そうではなかった。

3時間くらいいただろうか。移動すると言う。僕にしてみれば、ようやくといった感じだった。次のエリアは、中流部の沖。何もない。「どういうエリアか?」と訊くとフラットだ、と応える。10mのフラットで、何もない。ここを釣るのか?と不安になる。集中力を持続させるものがない。そこで、僕はパーチを釣ったが、その状況に耐えられず、とうとう地図はあるか?と切り出した。

「ブレイクを釣りたい。バスのクルーズルートになり得るから」というと「判った」といって移動してくれた。地図で大体示唆するが、なかなかたどり着けない。マークのエリアを提案するわけにはいかない。10mの沖をグルグル回っている。そしてブレイクが判らないという。

岸に向かって行けばブレイクはあるというと、ようやくたどり着いた。僕に30分だけほしいと言うとOKしてくれ、バウに立たせてくれた。しかしイメージが違う。ブレイクが緩やかすぎる。15ft~20ftのブレイクだというが、知らないという。地図でブレイクが寄っている箇所を指して、こういうところだ、というとそこに行こうと移動する。ボートの調子が悪く、プレーン出来ない。

時間は後、2時間もない。橋桁に絡むブレイク。シャロー側は、10ftもなくグラスが茂っている。これでは、フィーディングに上がれない。やはり、プラクティスをしていないために、イメージが違い過ぎる。やはりプラクティスを独力でやりたかったという気持ちが募りストレスが溜まる。

またしても僕は、そこでパーチを釣る。なぜ、バスが来ない?カークは、「この水深は魚が多いし、俺も好きなエリアだ」といっていたが、魚を止める要素がない。橋桁を釣りたかったが、他のボートが入っていた。「どこか行きたいエリアはあるか?」ときくと「ない」と応える。

お手上げだ。朝、釣れたエリアに戻ろうと提案したが、ボートが多くてダメだという。僕は、ボートが多くても魚が確実にいるであろうエリアでやるほうが効率がよいと思ったが、それ以上は言わなかった。残りの時間は、支流の橋桁付近で時間をつぶし、タイムアップとなった。

釣果は出なかったが、自分の意見を聞いてバウに立たせてくれたことにお礼をした。そのことについては、本当に感謝している。ルール上は、「ボーターとノンボーターは同等の釣り時間と権利を持っている」と謳っている。しかし、僕は、本当のノンボーターで、ボートを持ってきたけれど交渉の末、ノンボーターになったわけではない。

ボーター達は、3万ドル以上を支払いボートを買い、10時間以上もトレイルしてそこまで来ている。それだけしている者に、座っているだけで現地に着いた、手ぶらに近い状態で参加しているものが同等の立場を主張出来るはずがない。同時間の釣りを、主張することはルール上は出来るのだが、僕にはそれは出来ないと思っていた。そういった意味でもカークには、非常に感謝している。

ただ、検量後に昨日は、何ポンドだった?と訊くと「ゼロだった」と応えた。「12本取ったっていったじゃん。それってプラの話?それなら、最初からそういってよ」と思った。ボーターとして参加したい。プラクティスを独力で行いたい。そういう気持ちを確固たるものにさせた日でもあった。

U氏のボーターは、初参加のボーターで、浅瀬のロックエリアで無茶な運行をし、ハンプに激突し、ロアユニットをふっとばし、釣りをする時間は2時間ほどだったらしい。こういった状況に対しても、ノンボーターという立場は辛い。ノンボーターの宿命といってもよいだろう。

極端な話、ノンボーターでは参加するということは、その参加の意味を半減させると感じた。もっと言えば、半減以下だ。トーナメンターとして参戦するならば、お金と時間の無駄といっても過言ではないかもしれない。ガイドを受けるつもりで来るならそれでよいかもしれないが、僕はそんなつもりでは来ていないのだから。

明日のパートナーをチェックする。TOP150参戦中で、田辺哲男とトレイルしたこともある、あのマーク・カイルだ。その日の夜、ボートディーラーでもあるジェフとU氏らと夕食をとった。ジェフに「まだ、本戦でバスが釣れていない」と話すと、「マークのやっていることを、良く見て真似しろ」とアドバイスをくれた。そして「僕が明日、40LB釣ったら優勝だね」と話すと「もし、おまえが優勝したら、ボートをやる」といって笑った。

しかし、内心ではノーフィッシュを覚悟していた。なぜなら、日を追う毎にタフな状況になっていることを実感していたからだ。明日は、マークの釣り、トッププロの釣りを見て、勉強できるということにモチベーションを置くことにした。モーテルに戻ってから気付いたのだが、前日に買っておいたリザードのワームを、カークのボートのストレージに忘れてきてしまっていた。カークの携帯に電話して、翌日の朝、ワームは無事僕の手に戻ってきた。よかった・・。

桐山孝太郎プロ。気さくで、豪快で面白い人。生き方からして、人間の幅の広い人だ。(カークとの写真を撮るのを忘れてしまっていた・・